2012年12月17日月曜日

「Maximus V Formula」フォトレポート。8月登場予定のゲーマー向けマザー,その概要を押さえる

 ASUSTeK Computer(以下,ASUS)が展開する「」(Republic of Gamers)ブランドは,紆余曲折を経て,PC本体やサウンド系などにも展開されるようになるなど,かなり大きくなった。ただ,読者がR.O.G.と聞いて最初に思い浮かべるのは依然として,黒と赤を基調としたマザーボードではないだろうか。

Maximus V Formula/ThunderFXの製品ボックス  そんなR.O.G.マザーボードの最新モデルとして投入予定となっているのが,「Intel Z77 Express」(以下,Z77)チップセット搭載マザーボード,「Maximus V Formula」だ。
 Z77搭載のR.O.G.マザーボードは,エントリーゲーマー向けの「Maximus V GENE」が早い段階から販売が始まっていたが,コアゲーマーおよびエンスージアスト(Enthusiast,熱狂者。ここでは「PCマニア」くらいの意)向けとされるFormulaモデルは,オーバークロッカー向けのExtremeモデルともどもので,待っていたという人も少なくないと思う。

 今回では,そんなMaximus V Formulaの特別版で,外付けサウンドデバイスが付属する「Maximus V Formula/ThunderFX」の静態サンプルを入手できた。8月中にはメーカー想定売価3万6000円前後で国内販売が始まる予定とのことなので,一足早く,写真メインでチェックしてみたいと思う。
Maximus V Formula
メーカー:

電源仕様「Extreme Engine DIGI+ II」を理解するMaximus V Formulaのフェーズ数は8+4(+2)
Z77チップセット  ASUSはMaximus V Formulaのプロトタイプを,そのとき,仕様の一部は明らかになっていたりもするのだが,だいぶ経っているので,あらためて紹介していこう。
 冒頭でも紹介したとおり,Maximus V FormulaはZ77チップセットを搭載しており,LGA1155パッケージのCPUに対応している。基本的には「Core i7-3770K/3.5GHz」などといったIvy Bridge世代のCoreプロセッサと組み合わせることが想定されているが,PCI Express 3.0(PCI Express Gen.3)接続が利用できなくなるなど,いくつかの制限を受け入れられるなら,Sandy Bridge世代のCPUと組み合わせて利用することも可能だ。
電源部はExtreme Engine DIGI+ II仕様とされる  電源部は,「」やMaximus V GENEと同じ「Extreme Engine DIGI+ II」仕様だ。これはCPUのコアとアンコア部,DRAMを,低遅延で精度が高いとされるデジタルVRMで制御する「DIGI+ Power Control」の強化版……のだが,入手した資料によって詳細が異なっていたため,今回あらためてASUS本社の開発チームへ確認したところ,従来とは異なる回答が得られたので紹介しておきたい。

 それによると,Extreme Engine DIGI+ IIというのは,デジタルVRM制御のことを指しており,その意味でDIGI+ Power Controlとの間に違いはないのだそうだ。厳正を期せば,DIGI+ Power Controlでは,「2013年にIntelが導入する新しいVRD仕様」(ASUS)とされる「VRD 12.5」を採用し,デジタルVRMで制御するアンコア部の対象にCPU統合型グラフィックス機能を加えた「Smart DIGI+ Power Control」へと進化しているので,Maximus V Formulaで採用されるExtreme Engine DIGI+ IIは,ラスティハーツ RMT,Smart DIGI+ Power ControlのR.O.G.版という理解が正しいということになる。

 ただし,Extreme Engine DIGI+ IIもSmart DIGI+ Power Controlも,「同じ世代のデジタル電源回路を指す」という意味では同じだが,それが「構成部品も同じ」ということまでを示していない点には注意が必要だろう。
 実装面積が小さく,温度上昇も低いことで知られるTexas Instruments製のパワーMOSFET「NexFET Power Block」や,50Aもの大電流量に対応するというチョーク「Black Metallic Choke」,温度耐性の高い日本メーカー製コンデンサ「Black Metallic capacitors」を採用しているという点で,Maximus V Formulaの電源回路は,R.O.G.ブランドに属さないASUS製マザーボードとは確実に異なるというわけである。

 ちなみに気になる電源フェーズ数はCPU側が8+4,DRAM用が2。いずれも,負荷状況に合わせて動的に切り替えられる仕様だ。
Maximus V Formulaのメイン電源部からヒートシンクを取り外した状態。電源周りの搭載部品は(フェーズ数など,細かい部分は別にして)Rampage IV ExtremeやMaximus V GENEと同じだ 電源部はマザーボード背面側にもヒートスプレッダが用意されている(左)。右は取り外したところ
Fusion Thermo。液冷が前提なのではなく,液冷も行える空冷ヒートシンクという理解が正しい  CPU側VRM部にある大型のヒートシンクには「Fusion Thermo」という名前が付けられているが,基本的にはよくある空冷ヒートシンクと考えて差し支えない。ただし,両端に液冷用のホース接続端子が標準で用意されているため,液冷ユニットを持っている場合には,組み合わせて利用することもできるようになっている。


2-way SLI&2/3-way CFXに対応mini PCIeを拡張できるドーターカードも付属拡張スロットはCPUに近いほうからx4,x16,x1,x1,x16,x1,x16。x4スロットは写真向かって右上側が閉じていないため,x4接続になるのを納得のうえなら,x8以上のカードを差すこともできる。なお,写真右端に見える4ピンの電源コネクタは,マルチGPU構成時に向けたもの。PCIeスロットの電源供給を安定化させるという  PCI Express(以下,PCIe)スロットはx16が3本,x4が1本,x1が3本で,2-way SLIもしくは2/3-way CrossFireXをサポート。以下,Ivy Bridge世代のCPUを差す前提で話を進めるが,3本の赤いx16スロットはCPU側から見て,


といったPCIe 3.0構成が可能だ。1本めと2本めの間には2スロット分のスペースが確保されているので,2-way動作時の冷却に配慮があるとはいえるだろう。

 PCIeといえば,Maximus V FormulaのI/Oインタフェース部にピンヘッダが用意され,ここにPCIe接続となるドーターカード「mPCIe Combo」を装着できる点にも注目しておきたい。
 mPCIe Comboは,両面に2つのmini PCIe 2.0スロットを搭載するカードで,標準では片側にIEEE 802.11a/g/n対応の無線LAN&Bluetooth 4.0コンボカードが取り付けられている。要するに,アンテナを取り回しやすいよう,I/Oインタフェース部に取り付けられているわけだが,もう一方のスロットは「mSATA用」として空いているので,mini-Serial ATA(mSATA)接続のSSDを差し,「Intel Smart Response Technology」でキャッシュとして使うといったアイデアは当然考えられる。
mPCIe Combo用のピンヘッダはI/Oインタフェース部に用意されており,mPCIe Comboを差し,付属のネジ&金具で留めて用いることになる mPCIe Combo。片側には標準でIEEE 802.11a/g/n対応の無線LAN&Bluetooth 4.0コンボカードが取り付けられている。もう片方はmSATA用で,「mSATA」といったシルク印刷もあったりする
チップセット側のPCIeコントローラだけでレーン数が足りなくなるため,スイッチチップによって補っている  ちなみにZ77チップセット側のPCIe 2,MHF RMT.0コントローラは8レーンしか用意されていない。なので,黒いPCIe x4/x1スロットの数やmPCIe Combo,そしてオンボードデバイスを考慮すると,レーン数がまったく足りないことになるが,Maximus V Formulaでは,PLX Technology製のPCIe 2.0スイッチチップ「PEX 8608」を搭載することでレーン数を確保している。


オンボードサウンド機能を強化しつつ外付けサウンドデバイスも付属
 オンボードデバイスの話が出たところで,Maximus V Formulaのオンボードデバイスをチェックしてみることにしよう。
 Serial ATA 6Gbpsポートは,Z77による2つと,(ASUSの子会社である)ASMedia Technology(以下,ASMedia)製の「ASM1061」×2による4つで計6ポート。一方,I/Oインタフェース部に用意されるUSBインタフェースは,2つがZ77チップセット,2つがASMedia製の「ASM1042」によるものだ(※オンボードのUSB 3.0ピンヘッダはチップセットによる)。

白いUSBポートがROG Connect&USB BIOS Flashback用。その左隣にある[ROG Connect]ボタンと組み合わせて使うほか,通常のUSB 2.0ポートとしても利用できる。写真左端のボタンはCMOSクリア用だ  I/Oインタフェース部を見るとUSB 2.0ポートの1つが白いのに気づくと思うが,これは「ROG Connect」用としても利用できるものになっており,USBケーブル経由で別のPCからUEFI(≒BIOS)の設定変更を行える「RC TweakIt」に対応する。
 また,本ポートは「USB BIOS Flashback」に対応しているため,あらかじめUEFIのアップデートファイルを所定のファイル名へ変更してUSBフラッシュメモリに保存して差しておけば,あとはI/Oインタフェース部にある[ROG Connect]ボタンを押すだけでUEFIのアップデートを自動実行したりすることも可能だ。
オンボードのIntel 82579V(写真中央よりやや左)。右に見えるのは前出のASM1042である  オンボードデバイスに話を戻そう。
 1000BASE-T LANコントローラはZ77内蔵の論理層を利用しており,基板上には物理層となる「Intel 82579V」(WG82579V)を搭載。そして,忘れてはならないのが,アナログサウンド回路である。

 サウンド機能は「SupremeFX IV」とされ,アナログ7.1ch出力に対応するHD Audio CODECにCreative Technologyの「X-Fi」技術を組み合わせたものになるのだが,SupremeFX IVでは,そのアナログ回路をマザーボード上でデジタル回路から完全に分断しようとする技術が採用されている。デジタル回路とアナログ回路は,通電時に赤く光る線「RedLine」で分離され,さらにCODECには,ほかのデバイスが放つEMI(Electro Magnetic Interference,電磁妨害波)の影響を受けにくくなるよう,カバーが被せられているのだ。
 付け加えるなら,サウンド周りのコンデンサだけオーディオグレードのエルナー製になっているのも特徴として挙げられよう。
通電していないので黄土色に見えるが,マザーボード上を走る太めの線がRedLineだ(左)。右の写真では,CODECに対EMIカバーとなる「SupremeFX Shielding Technology」が取り付けられている点や,SupremeFX IV周辺だけコンデンサの種類が異なる点などを確認できる。ちなみにSupremeFX IVのサウンド出力にあたってはマルチチャネルストリームのリアルタイムエンコード機能「DTS Connect」や,バーチャルサラウンド機能「DTS Ultra PC II」を利用可能
ThunderFX。本体前面には3.5mmミニピンマイク入力とヘッドフォン出力用端子,Xbox 360用ゲームパッドに向けた2.5mmミニピンのマイク出力端子,ボリュームダイヤル,PC/Xbox 360/PlayStation 3の切り替えスイッチとなる  面白いのは,そこまでサウンド周りにこだわっていながら,Maximus V FormulaがThunderFXというUSBサウンドデバイスを付属させたモデルを用意してきていることだ。
 「そこまでやってもやっぱりオンボードサウンドには自信がないのか」と思われる危険はなかったのか不安になるが,ともあれThunderFXというのは,C-Mediaのサウンドチップ「CM6631」を搭載する,USB 2.0接続型のサウンドデバイス。ヘッドフォン出力とマイク入力を持つので,基本的にはヘッドセット用ということになるだろう。

 ポイントは,D/AコンバータレベルのS/N比が120dBと極めて高い点と,内蔵のヘッドフォンアンプが300Ωにまで対応するため,高インピーダンスのオーディオ用ヘッドフォンも問題なく駆動できる点,マイク入力時の環境ノイズを低減できる「ENC」(Environmental Noise Cancellation)が利用できる点,そして,アナログ接続であればPlayStation 3やXbox 360でも利用できる汎用性が確保できる点だ。
 冒頭で述べたとおり,Maximus V Formula/ThunderFXのメーカー想定売価は3万6000円前後。ThunderFXが付属しないMaximus V Formulaだと同3万円前後とのことなので,あとはこの6000円という価格差を納得できるかどうかだろう。興味のある人は存在を憶えておくといいかもしれない。
本体背面の入力インタフェースはアナログRCA×2(ステレオ1系統)のみ。USBインタフェースは給電と,PCではUSBサウンドデバイス機能,PlayStation 3ではマイク機能用となる

「これぞゲーム用」という分かりやすい機能はないものの多機能&豪華で,ハイクラスなゲームPC用としてはアリ
 今回入手したのは静態モデルなので,UEFIによるオーバークロック設定周りは確認できていない。ただそこはR.O.G.ブランドのマザーボードなので,(Extremeシリーズほどではないにせよ)充実はしているだろう。
 「これぞゲーム用」という機能はとくになく,あえていえばアナログサウンド機能周りくらいなのは残念だが,R.O.G.マザーボードは,むしろ多機能さや豪華さがウリなので,その点ではいつもどおりに仕上がっていると述べてよさそうだ。
 ハイクラスな構成でZ77ベースのゲームPCを自作したいという人の注目は確実に集めるはずである。
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