2013年4月2日火曜日

1万4000人の4Gamer読者を通して見る日本のオンラインゲーム市場。日本のオンラインゲームはどこへ向かえば

 2008年12月?2009年1月にかけて行われた,毎年恒例の「4Gamer年末特大プレゼント」。今回の応募総数は,2007年末の8600通を大幅に超える,1万3855通でした。毎度のことながら,やたら多くのアンケート項目があったにもかかわらず応募してくださった読者の皆様,たくさんのプレゼントを提供してくれたメーカーの皆様,あらためてここに御礼申し上げます。ありがとうございました。

2009年度版の国内オンラインゲーム市場の概観図だ。2008年にサービスインした新規タイトルは,どういった層に受け入れられたのだろうか

 さて,好評を博した昨年の「」記事から約一年。「今年はいったいいつ載るんですか」「なぜ載せないんですか」「仕事していますか?」という応援(?)の声を読者,そして業界人の皆様から多数頂いていたわけで,ちょっとした分析記事と共に,今回もその集計結果を公開してみよう。
 本記事で公開するのは,1万3855の応募のなかから,多重投稿などで無効と思われるサンプルを除外した,1万2743人分のデータを集計したもの。アンケート全体の集計はもちろんのこと,タイトルごとに絞ったプレイヤーの属性分析を今回も行ってみた。集計の対象となったタイトルは,実に140本以上。いやぁ,実にめんど……調べがいがありました。

 ともあれ,1万を超えるサンプル数というと,ピュアにゲーマーだけを対象としたアンケートとしては,おそらくは国内最大規模のはず。そんなアンケートの集計結果からは,日本のオンラインゲーム業界,そしてゲーム業界のどんな姿がうかがえるのか。早速その内容をお伝えしよう。

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4Gamer読者の平均年齢は27.4歳。昨年とほぼ変わらず



 細かい分析に入る前に,まずは4Gamer読者全体のデータから紹介していきたい。4Gamer読者の平均年齢は27.4歳と,ほぼ昨年(27.5歳)と同じ数値。ただ全体の割合からいうと,11?15歳の層が2.2%から3.8%に,16?20歳の層が17.8%から19.1%へと微増しており,若干ではあるが,“若い”層が増加している。2008年10月から4Gamerで取り扱いを始めたコンシューマゲーム機関連の記事の影響かもしれない。
 ちなみに女性読者層の割合は,6.4%から5.1%へと減少(※注)。これについては,編集部で数時間にのぼる討議に及んだ結果,女の子の画像を探しては,いつもしている編集部のKawamuraの責任ということにしておいた。

※注:女性読者の応募数自体は増えています


 ともあれ,ゲーム媒体としては比較的高めの年齢層であることは昨年と変わらずだ。職業別で「会社員(技術系)」の割合が高いところなども,Webメディアらしい特徴の一つだといえるだろう。
 また職業別のデータなどを見てみても,平均年齢からうかがえるとおり,会社員(技術系)を中心に,やはり社会人が中心の読者層となっている。次いで,大学生や高校生といった項目が続くわけだが,全体的なデータとしては,昨年とほとんど変わらない結果となった。……まぁ,そんな急激に読者層が変化してしまっては,我々編集部も困ってしまうわけで,これはこれで至極妥当な集計結果だといえるだろう。

 いずれにせよ,4Gamer全体の読者像としては,このような傾向になる。ただ注意してほしいのは,今回公開するデータは,あくまでも「4Gamer読者を通した」結果であり,下記に掲載しているタイトルごとの平均年齢や男女比などといった数値が,そのタイトルの実際のデータとまったく同じであるという保証はない。これらを踏まえたうえで,さらに突っ込んだ部分を見てみよう。


この1年で日本のオンラインゲーム市場はどう変化したか




 2008年もたくさんのタイトルがリリースされた国内オンラインゲーム市場だが,今回も,平均年齢とPCスペックを軸としたタイトルの分布図を作成してみた。さっと見ただけでも,昨年とポジションが変化しているタイトルと,あまり変化していないタイトル,この2パターンがあることがお分かりだろう。

 基本的には,以前から続くタイトルのほとんどには,高齢化(右へシフト)とローエンド化(下にシフト)の傾向がある。まぁただ,PCスペックという観点でいえば,昨年は必要動作環境がハイスペックだと言われていたゲームでも,今やミドルクラスになっているというのは,至極当たり前の話だ。また年齢にしても,プレイヤーの緩やかな高齢化というのは,なかなか避けにくいものではある。

 そんな中から,目立つタイトルをいくつかピックアップするとすれば,プレイヤーの平均年齢が下がっている「」や「」は,注目すべきタイトルかもしれない。プレイヤーの平均年齢が下がっているということは,すなわち新規プレイヤーの獲得ができている可能性を示すからだ,ドラゴンクエスト10 RMT
 ほとんどのタイトルで現状維持あるいは高齢化の傾向が見られるなかで,平均値を大きく下げていたタイトルは,ほかには「」や「」などごく僅かである。

 またハイエンド志向のプレイヤーが多かった昨年から,ローエンド寄りのプレイヤー層に変化している「」や「」も,興味深い一例だ。サドンアタックなどは,昨年末に公式全国大会を開催するなど,積極的な運営展開が目立っていたタイトルだが,そうしたプロモーションが功を奏し,いわゆるカジュアルゲーマー層の獲得に成功しているのかもしれない。
 ただそうした一方で,ハイエンド向けFPSの分野は,「」や「」といったタイトルが台頭しており,プレイヤーの棲み分けが進んだ結果とも見て取れる。

 ちなみに今回の分析で個人的に興味深かったのは,2008年の新規タイトルを中心として,高年齢&ローエンド路線の分野が賑わっているという点だろう。また低年齢&ハイエンド路線の分野で,MMORPGがほとんど存在していない(この図では一つもない)ことも,非常に示唆的な現象だ。MMORPGという分野自体が,かなり“右側に寄っている”(高齢化している)ものだということが見て取れるだろう。
 確かにMMORPGというジャンルは,「」や「」「」以降,それらに匹敵するような大ヒットといえる作品は,ここ数年登場してきてはいない。
 より若い,新しいプレイヤー層にどうアプローチしていくのか。MMORPGというジャンルは,今やそこが大きな課題となっているのは間違いなさそうだ。

【追記】

 記事掲載後に,「(以下,CS)がなぜハイエンドなのか?」という賳枻い膜郡韦牵螭郡螭苏h明をしておきたい。 
 このデータは,「CSがハイエンド向けのゲーム」という意味ではない。あくまで「CSを遊んでいる人のPCのスペックは,全体的に高い傾向にある」という意味である。また逆に,ファンタジーアース ゼロなどに関しても,これは同作がローエンドPC向けのタイトルという意味ではなく,あくまでもプレイヤーの“傾向”を表している点に留意してほしい。
 例えばCSについて詳しく説明をすると,CSのプレイヤーは,ハイエンドFPSやいわゆるPCシングルゲームとの相関が非常に高く,それらのタイトルを遊ぶために,比較的頻繁にハイエンドマシンに買い換えて(もしくはパーツの換装を行って)いる層であるということ。
 「」(以下,WoW)などがハイエンド志向であり続けている反面,「」などがローエンド化しているのも,同様の理屈からだと考えられる。つまり,モンハンを遊んでいるプレイヤーは「モンハンが動けば十分」なのに対して,WoWのプレイヤーは,「他のハイエンドPCゲームも積極的に遊ぶ」層というわけだ。

※参考:カウンターストライクのプレイヤーがほかに遊んでいるゲーム

1位 Team Fortress 2
2位 A.V.A
3位 サドンアタック
4位 バトルフィールド 2
5位 マイクロソフト エイジ オブ エンパイアシリーズ
6位 Unreal Tournamentシリーズ
7位 クロスファイア
8位 OPERATION7
9位 バトルフィールド2142



プレイヤーがお金を使いたくなるゲームとは?



 こちらは,平均年齢と「月にオンラインゲームに使う金額」の平均を軸にしたタイトルの分布図だ。消費金額は,そのタイトルに対して使っている金額ではなく,あくまでも“遊んでいるオンラインゲームすべて”に使う金額となっているのだが,それでも,だいたいの傾向などは見えてくる分析結果となった。

 この分布図でポイントといえるのは,低スペックマシンで遊んでいるプレイヤーが,必ずしもお金を持っていないわけではないというところだろう。「」や「」などが最も特徴的な例になるが,低スペックであること,あるいは低年齢層プレイヤーが多いことは,必ずしもゲームに使う金額の少なさを示すものではない。
 低年齢層プレイヤーが多いながらも高い収益性を示す,「」やトキメキファンタジー ラテールの秘訣はなんなのか。また他のタイトルとは何がどう違うのか。オンラインゲームの運営に携わっている人は,そのあたりに思いを馳せると,いろいろと見えてくるものがあるかもしれない。
 先ほど示したPCスペックでの分布図,そしてこのプレイヤー単価の図を見比べていけば,各タイトルのプレイヤー層の面影がなんとなくつかめてくるはず。業界人の方は当然だが,プレイヤーの皆さんも,この図をもとに自分の遊んでいるタイトルの傾向などを考えてみると面白いだろう。


4Gamer読者にみる国内コンシューマゲーム機市場の変化



 昨年の柧━博`ムショウ2008を皮切りに,4Gamerでも取り扱いを始めたコンシューマゲーム。今回は,そんなコンシューマゲーム機市場の動向を,4Gamer読者を通して分析してみよう。
 上記のグラフは,2007年末?2008年末にかけての,4Gamer読者のゲーム機の所持率の推移を表したものだ。据え置き機,携帯ゲーム機を問わず,それぞれが順調にシェアを伸ばしていることが分かるわけだが,Xbox 360の比率が妙に多いのは,いわゆる洋ゲーファンを多数抱える4Gamer読者ならではの傾向といったところ。

 注目したいのは,ニンテンドーDS(以下,NDS)の伸び率が鈍化している一方で,ライバルであるプレイステーション?ポータブル(以下,PSP)が大きくシェアを伸ばしている点だ。PSPといえば,昨年「」が発売され,今では累計300万本を超える大ヒットを記録したことでも記憶に新しい。昨今,急速にゲーマー向けのタイトルが充実してきていることもあり,非常に勢いづいているのはご存じのとおりだ。
 4Gamer読者は,当然ゲーマー層が中心となっているわけだが,今回の調査結果は,PSPがゲーマー層の間で急速にシェアを伸ばしつつある,一つの実例ではあるだろう。
 据え置き機に目を向けてみても,PSPと同じソニー?コンピュータエンタテインメント(以下,SCE)が発売しているPLAYSTATION 3が,大きくシェアを伸ばしていることが見て取れる。総じて,SCEプラットフォーム陣営の好調ぶりが伺える内容だといえるだろう。



 これは,ゲーム機の所有率と,実際にゲーム機を利用している率,そして利用者数を所有数で割った「稼働率」をそれぞれグラフにしたものだ,DQ10 RMT。据え置き機では,Wiiの稼働率が低いこと,携帯ゲーム機では,PSPの稼働率が高いことなどが分かる。
 なかでもとくに目を引くのは,Wiiの稼働率の低さだろうか。所持している数こそ据え置き機ではトップのWiiが,実際に利用している数では最下位になってしまっている。まぁ昨年の11月から年末にかけては,他のハードウェアでゲーマー向けのタイトルが盛り沢山だったこともあり,そちらにプレイヤーが流れてしまったという側面もあるだろうが,任天堂陣営からすれば,長い目で見るとこの傾向はあまり喜ばしい事実ではないだろう。
 とはいえWiiには,2009年夏に発売が予定されている「」という,ゲーマー向けのいわば切り札的タイトルもあり,これがどういう影響をもたらすのか,気になるところだ。

 また,各ハードウェアの所有者ごとに絞って,年間の平均ゲーム購入本数も併せて調べてみた。結果は以下のとおりだ。

全機種合わせたゲームの購入本数であり,いわゆる“装着数”ではない点に注意してほしい

 結果はなんとなく予想どおりといったところか。据え置き機を持ってる人ほど“ゲーマー度”が高く,カジュアルな層は携帯ゲーム機が中心になっている雰囲気。とくにXbox 360ユーザーのロイヤリティの高さは,注目に値するだろう。
 Xbox 360は,販売台数こそ国内では最下位だが,昨今は「」や「」など,ゲーマーにとって魅力的な国産の大作RPGを引っ提げ,積極的な展開が目立っている。また海外市場では大きなシェアを獲得していることもあり,今後の展開も期待したいところ。「」をはじめとした海外産の名作タイトルなども,どんどん日本市場に持ち込んでほしい限りだ。


まとめ&オンラインゲーム基礎データ表


 ともあれ,前回の分析記事に比べるとタイトル個々の話などがあまり出来ていない気もするが,すでにかなり長くなってしまったので,今回はここまで。タイトルごとのプレイヤー属性を比較した記事なども掲載したいと思っているが,思っているだけで終わってしまったらごめんなさい。

 また最後に,現在サービス中のオンラインゲームの中から,任意で選んだタイトルの基礎情報をひとまとめにした表を掲載しておく。昨年とはちょっとだけ変わって,オレンジの部分がMMORPG系,青がFPS系,そして緑色の部分がそれ以外のジャンルのタイトルという区分けだ。


 表では,平均年齢,男女比,平均消費金額,そしてPCメモリという,四つの項目を用意。ちなみにPCメモリというのは,ゲーム用PCのメインメモリ量の平均値を表したもので,ゲーム用に使っているPCのスペックの一定の目安になるデータ。平均消費金額というのは,月にオンラインゲームに使う金額を示したもの(そのタイトルに使う金額ではない)である。
 冒頭でも述べたとおり,これはあくまでも4Gamer読者というフィルタを通してみた結果であり,このデータがそのままタイトルの正しい属性データであるかどうかはまったく保証できないが,複数のタイトルで同時に比較検討することで,各々のタイトルの傾向や属性は,それなりに正しく把握できるハズ。上記で挙げた分布図と併せて,日本のゲーム市場およびオンラインゲーム市場の傾向を分析する参考にしてもらえれば幸いだ。


■ゲームメーカー/調査会社ほか法人様向け
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